「繋ぐ手を思う日のこと」
スーパー、図書館、保育園の送り迎え。
近頃、娘のほうから私の手を取ることが、なんだか少なくなったような気がしていた。
でも私はいつもの習慣だからなのか、手を握っていないことが不安だからなのか、
はい、とつい手を差し出してしまう。
私が、はい、と手を出したその時、娘はちょうど興味のあることに向かって走り出そうとしていたところだった。
手を握り返してくれたけれど、ハッとする。
私のいつもの癖が、娘のしなやかな勢いを、制してしまったのではないか。
足の先に広がる大きな大きな世界に、娘が自力で駆け出そうとするのを、私が手を引っ張て止めてしまった、そんな情景が目の裏に浮かんだ。
私の半径何十センチが娘のテリトリーではもうとっくになくなっていて、娘のいる世界は日々、日々、こちらが想像できないくらい大きくなっているのかもしれない。
その世界がぐんぐん広がって、気になる方へ一目散に走り出していくのを、この手は決して邪魔してはいけない、と静かな寂しさよりも先に、つよく思った。